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公開: 2026-07-13

コラム:「お言葉」のない式典――今上天皇への敬愛は、なぜ政治的立場を超えるのか

version 0.2(草案)/ 2026-07-13

出典は文末にまとめている。学術論文ではなく通信社・新聞社のニュース 記事、国会質疑、個人ブログレベルの出典が中心であり、一次資料での 裏取りは今後の課題である。本コラムは評価を下さず、確認できた事実の みを述べる。「無宗教」はどこから来たのかのコラムで、 無宗教化が進んだ現代日本において天皇が「祈る人」として宮中祭祀を 私的に続けていることを見た。本コラムでは、その天皇が現代の政治 状況の中でどう位置づけられているかを、2026年に起きた具体的な出来事 を中心に整理する。特定の政治家の意図の推測(誰の意向でこの決定が なされたか)は、確認できる公開情報の範囲を超えるため本コラムでは 扱わない。「天皇制」という言葉そのものが特定の政治的立場から 生まれた経緯は別コラムで扱う。


「ねじれ」:入れ替わる右派・左派の距離感

政治学者・中島岳志は東京新聞の論考で、天皇をめぐる従来の構図が 今上天皇のもとで入れ替わっていると指摘する。従来、左派論壇は天皇制 そのものに批判的な立場を取ることが多く、右派論壇は天皇への無条件の 敬意を示すことが多かった。しかし、2016年に天皇(現在の上皇)がビデオ メッセージで生前退位の意向を示したことをきっかけに、左派の一部は 「天皇の『お気持ち』に寄り添いながら議論」する立場に転じ、右派の 一部は「お気持ち」の内容への違和感・不支持を示すようになったという。 中島は、この入れ替わりの背景として、天皇自身のお言葉から窺える思想 信条が、左派リベラルの見解に近いことを挙げている。本コラムはこの 分析の当否を判定しないが、天皇をめぐる政治的立場が単純な保守・ リベラルの図式では説明しづらくなっている、という指摘として記録 しておく。

世論調査に見る支持の広がり

この「ねじれ」を裏付けるように、将来の「女性天皇」容認そのものへの 世論の支持は、近年の調査で高い水準を示している。共同通信の2024年 全国郵送調査では女性天皇を認めることへの賛成が90%に達し、毎日新聞 の調査でも81%が賛成している。特に今上天皇の長女・愛子内親王を念頭に 置いた支持は、従来の男系継承重視派の一部からも聞かれるようになって いるとされる。この種の支持は、通常の保守・リベラルという政治的立場の 対立を越えて広がっている点が指摘されている。愛子内親王を名指しで 念頭に置いた「愛子天皇待望論」という主張・言説の内容と、これに反対 する具体的な政治家の発言は別コラムで扱う。

昭和100年記念式典:「お言葉」がなかった日

2026年4月29日(昭和の日)、東京・日本武道館で政府主催の「昭和100年 記念式典」が開催された。天皇皇后両陛下が御臨席になり、高市早苗 首相が式辞を述べたが、天皇陛下の「お言葉」はなかった。宮内庁 長官・黒田武一郎はこれについて「政府の考え方、申し出に基づいて」と 説明し、内閣府の式典準備室長も国会答弁で「総合的に勘案」「今回は 臨席のみをお願いすることとした」と繰り返し述べた。

前例との比較

同種の国家的な記念式典における天皇の関わり方は、時期によって異なる。

式典年内閣天皇の関わり
明治100年記念式典1968年佐藤栄作内閣昭和天皇・香淳皇后が御臨席、お言葉あり
明治150年記念式典2018年安倍晋三内閣天皇皇后両陛下(当時、現上皇上皇后両陛下)は御臨席なし。宮内庁は「政府からお声がけがなかった」と説明
昭和100年記念式典2026年高市早苗内閣天皇皇后両陛下が御臨席、ただしお言葉なし

1968年の明治100年式典では天皇が臨席してお言葉を述べたのに対し、 2018年の明治150年式典では天皇皇后両陛下自体が招かれなかった。2026年 の昭和100年式典では臨席は実現したものの、お言葉の機会は設けられ なかった。3つの式典を並べると、天皇の関わり方の程度が時代・内閣に よって異なっていることが分かる。

国会でも問われた「総合的に勘案」

2026年5月12日の参院外交防衛委員会で、立憲民主党の田島麻衣子参院 議員が「国民の皆さん、なんでだろうという声が非常に多い」と指摘し、 お言葉がなかった理由を政府に質した。これに対し政府側は「総合的に 勘案」という同趣旨の答弁を5回にわたり繰り返し、具体的な理由は 示されなかったと報じられている。

式典後、宮内庁は、御臨席になった両陛下が「過去の歴史から謙虚に学び、 深い反省とともに平和を守るために必要なことを考え、将来へとつなげる 努力を続けることが大切との思いで式典に臨まれた」との感想を発表して いる。


まとめ

(1) 政治学者・中島岳志は、天皇自身のお言葉から窺える思想信条が リベラル寄りに見えることを背景に、天皇をめぐる従来の左派・右派の 距離感が入れ替わる「ねじれ」が生じていると分析している。(2) これを 裏付けるように、女性天皇・愛子内親王への支持は世論調査で8〜9割に 達し、通常の保守・リベラルの政治的立場を越えて広がっているとされる。 (3) 2026年4月29日 の「昭和100年記念式典」では、天皇皇后両陛下が御臨席になったものの、 天皇陛下のお言葉はなく、宮内庁・政府は「総合的に勘案」という説明に 終始した。(4) 同種の記念式典における天皇の関わり方は、1968年の 明治100年式典(お言葉あり)、2018年の明治150年式典(御臨席なし)、 2026年の昭和100年式典(御臨席のみ)と、内閣によって異なっている。 (5) この決定の背景にある具体的な意図については、国会質疑でも 明確な説明がなされておらず、確認できる公開情報の範囲では特定でき ない。


出典

出典は通信社・新聞社の報道記事、国会質疑の報道、政治評論記事が 中心で、学術論文ではない。「昭和100年記念式典」をめぐる一部の 個人ブログ・SNS上の論評には、首相の具体的な立ち居振る舞いに関する 未確認の指摘も見られたが、複数の情報源で裏付けが取れなかったため 本コラムには含めていない。お言葉がなかった決定の具体的な意思決定 過程、および中島岳志の分析の妥当性については、一次資料・学術文献 による確認を今後さらに進めていく。